<植物の概説>
ビワ はバラ科の常緑高木で、冬に花が咲き、果実は初夏に熟します。ほんのりとした甘みと夏の訪れを告げる旬の果物として人気があります。 千年も前から日本で育てられてきた歴史のある果物ですが、最近では生産量が減り、高級なものとなってしまいました。
ビワは暖地性の植物で、日本では石灰岩の山地に多く、新潟県の佐渡島が北限となっています。
11月になると香りの良い白い花が咲き始め、1月までつぎつぎと咲き、冬の寒さで死ぬことがなければ6月ごろに実が熟します。果実の小さい在来種では、1果房あたり10〜15個も実がなります。 卵型や円形、少し尖ったものなどいろいろな形の果実を見うけますが、日本に古来自生していたビワは果実の小さなもので、食用としてではなく観賞用として利用されていたようです。
江戸時代に中国から果実の大きな品種がもたらされ、食用として広く普及していきました。現在では、千葉県富浦町(南房総市の一部)が日本一の産地として知られています。このほかに、ビワの特産地としては、兵庫県淡路島や長崎県などが有名です。
<露地ビワの二大品種>
千葉県富浦町 には、江戸時代からビワ栽培の記録がありますが、これを本格的に始めたのは明治中期です。その後、改良が進み、さまざまな品種が登場してきました。
この段落には、そのうちの二つを掲げておきます。
茂木(もぎ)
長崎県茂木町で、唐ビワ(中国産)の実生から発見されたビワの代表的な品種です。実は、柔らかく果汁多く、風味、甘味ともに強く美味しい品種です。収穫時期は、 5 月下旬〜 6 月上旬です。天候により、1週間ほど前後します。
津雲(つぐも)
農林水産試験場で出来た品種です。茂木ビワ×田中ビワの交配種で、果肉が厚く、果汁多く、酸味少なく甘味が強い美味しい品種ですが、赤あざ、そばかす等、果皮障害も多い品種です。そのため栽培が難しく、あまり普及していませんが、美味しい品種ですので、自家用として栽培されています。収穫時期は、 6 月上旬〜 6 月中旬です。天候により、1週間ほど前後します。
<栽培法>
植えるべきなのは、 日当たり・通風がよい場所。ビワは暖地に適した常緑樹で、冬も 0 度以下になる日が少ない地域に適しています。庭植えの場合は、関東以西です。東北地方や北海道などは鉢植えで室内で管理します。
植えつけ後は、水をたっぷり与える。株がしっかりとしてきたら、過湿に注意してください。
土は、赤玉土 6 ・川砂 1 ・腐葉土 3 の割合のものを好みます。施肥は、庭植えなら 3月ころ、鉢植えなら 9月中旬ころが適期。グアノ・竹酢・燐酸肥料などを好みます。
開花後、実がつきはじめたら摘果します。鉢植えの場合は、室内の明るい場所で管理し、筆先などで人工受粉してあげましょう。
5 月から 6 月末までは実の収穫時期のため、ビワの生葉の入手が困難になります。 8 月後半〜 2 月末までにせん定(いらない枝を切ってしまう)を行い、 3 月〜 4 月末までにビワの実に袋がけを行います。
ビワの木にとって、一番環境が良いのは山の高いところです。なぜなら、山の高いところは、急な斜面になっているので、冷たい空気が下に流れていってしまうからです。ビワは冷たい空気にさらされると実がならなかったり、表面の組織が壊れてしまいます。これを寒害といいます。寒害になりにくい場所が、山の高いところなのです。しかし一方で、急斜面での作業はとても大変で、手間もかかります。
山の高いところでの作業には苦労が多く、ビワ農家として働く人も減っています。そこで、なるべく作業を楽にするために山の低いところでの生産を行っています。しかし、作業は楽になっても、山の低いところでは冷たい空気がたまってしまいビワが寒害をうけてしまう、という問題点があります。
山の高いところではビワは良く育ちますが、働く人がとてもたいへんです。山の低いところでは働く人は楽になりますが、ビワが寒害を受けてしまうかもしれません。そこでハウス栽培が登場しました。ハウスは平地にあり、作業もどんどんはかどるので、働く人はたいへん楽になります。また、ハウスの中はあたたかくしていますので、ビワが寒害にあうこともありません。しかし、春ごろから日差しが強くなると、ハウスの中が暑すぎることもあり、かえってビワが傷んでしまうこともあります。ハウスでは温度の管理が重要になります。ちなみにハウスビワは早い時期に出荷できるので、高く売ることができます。
ビワの栽培は、「寒害」と「作業する人の苦労」という二つのことを一緒に考えることが大切です。私たち富浦の先人たちは、この問題に真剣に取り組み、山の上から平地にまで広くビワを栽培するようになりました。そして、現在のようなビワ日本一の地を造り上げたのです。
<ビワの葉健康法>
私たちは、決して葉を中心にビワ栽培を行っているわけではありません。あくまでも果実の副産物として、その収穫後――毎年八月ごろから、翌年二月ごろまでに供給させていただいております。
ビワの葉を収穫しやすい場所は、海からすぐに山があるところです。海風の影響で温度も高く、手軽に採取することができるのです。ただし、果実と違い、日当たりの悪い場所のほうが葉の品質はよくなります。
ビワの葉を使った健康法はお釈迦様が最初に行われた記録があり、奈良時代に鑑真和尚によって中国から日本に伝えられたと言われる古い健康法です。関西方面では庭木や畑によく見かけますので、手に入りやすいものですからぜひお試しください。
健康法に使える古い葉になるまで数年かかりますので、乱獲なされないよう、必要なだけ木からいただくようにしてください。葉の大小は問いません。また、周りが黒ずんでいたり、端にとげが立っていたりもしますが、やはり気にする必要はないのです。
1.ビワの葉を直接気になる場所に貼る方法
ビワの葉は色の濃い古い葉を使用します。これを調子の悪いと思われる場所に当てて貼っておくと、体温によりビワの葉が温められることにより、健康に良いと言われています。体温で葉がすぐにバリバリになるので、葉の上にラップや油紙を貼っておくとより便利です。
2.金地院法(ビワの葉をあぶって撫でる方法)
臨済宗の寺、金地院(こんちいん:静岡県引佐郡細江町)で河野大圭(こうのたいけい)師が行った方法です。
緑の濃い厚手の生葉の、光沢のある表面を焦げない程度に火であぶり、二枚合わせて両手で十回ほど擦り合わせ、これを一枚ずつ両手に持って熱いうちに皮膚に直接密着させ、押し揉むようにして撫でます。撫でる場所はまず腹部を六〜七分、丹田とみぞおちを入念に行い、その後、背・肩・腰・尻まで全部で十分程度行います。最後に局所、
3.ビワの葉温灸(ビワの葉に棒もぐさを使う方法)
ビワの生葉に棒もぐさを使用する温灸で、一般に大変よく普及しています。栃木県真岡市の長蓮寺が発祥の地といわれています。
ビワの葉を気になる場所やツボに当て、その上に棒もぐさを立てて温灸します。ビワの葉成分・棒もぐさによる温灸・棒もぐさの押圧による指圧などがあります。
更に、ビワの葉利用法と文学との関係についても述べておきましょう。
例えば「替わり目」という落語では、主人公がうどん屋を利用して酒の燗をつけますが、古い形では、うどん屋ではなく枇杷葉湯屋が利用されていました。
また織田作之助の小説「競馬」にも、主人公の寺田氏が、ビワの葉を使ったくだりが見られます。 |